商社に反映される日本の独自性

日本で7社あると言われる総合商社

商社という言葉を耳にしても実際にその会社に属している人以外は漠然としたイメージを抱いたままで、実情を知らないといったケースがほとんどとなっています。

何らかの分野に特化した製品などを扱う専門商社の場合は社名にその分野がわかる名称が付いていることで明確なイメージを持つことができますが、総合商社の場合は知名度のわりにどういった業務がメインで社会において果たしている役割なども今一つ見えにくいというのが実情です。

日本では7社あると言われる総合商社ですが、この形態は世界的に見ても非常に特殊性があり、ほぼ日本独自の業態とまで言われています。

海外でも当然さまざまな貿易業務を行うトレーディング・カンパニーがありますが、日本で良く言われるようなカップラーメンからミサイルまでといったありとあらゆる製品を取り扱うといったイメージの会社はほとんど見られないことから、海外では奇異の目で見る向きもあると言われます。

日本では誰もが耳目にしたことがあるそうそうたる社名に多くの人が特別感を抱き、いずれの会社も一流大学を出たエリートでなければ就職できないといったイメージを持っており、憧れというよりは畏怖の念すら感じている人も少なくありません。

それらの会社はグローバル企業とはと問われた場合に多くの人が連想する社名でもあり、世界の中では特種な業態の企業であるということに意外な気持ちを抱く人も多く、戦後の日本が発展する過程で構築されて来た特殊な事情に気付くきっかけにもなるとされています。

日本では戦後の財閥解体によって解散させられていた大財閥同士が合併するなどして数年を経て統廃合されながら現在の7社体制になったと言われ、戦後の事情によって国全体で高まっていた必要性や戦後経済の行方などに左右されながら変遷を遂げて、国内のさまざまな産業を支える上でも無くてはならない存在になって行きました。

特に戦後は製造会社ごとの直接海外に向けての輸出が難しかったことから、それら国内産業との長きにわたる信頼に支えられた企業間取引の実績を持っていた総合商社が果たした役割は、高度経済成長を着実に遂げる上でも欠かせないものだったと言えます。

代表的な7社の知名度は高く、特別な存在の一流企業

戦後と違ってあらゆるメーカーがグローバル企業となり貿易の面で他社を頼る必要性が薄くなった現在でも、代表的な7社の知名度は高く特別な存在の一流企業という見方をされているのは、各社ともに業態を非常に巧妙にシフトさせ、単なるトレーディング・カンパニーではなく総合事業の運営やさまざまな事業への投資を行う企業としてのイノベーションを成功させたからです。

投資の分野で、高い優位性を持った企業に変貌を遂げた

戦後のような国境を越えた企業間同士の貿易を取り持つ事業の必然性が失われつつあった時代から、文字通りの総合力を高めて投資の分野で多くのメーカーなどに対して高い優位性を持った企業に鮮やかに変貌を遂げたと言えます。

投資の分野での存在感が高まったことでマージンやコミッションをはじめ、さまざまな事業への投資から得られる配当収入や金利収入や多くのサービスで得られる手数料など、商品売買などで得られる収益よりも効率の良い収益源を増やしたことで一層の飛躍を遂げています。

現在も飛ぶ鳥を落とす勢いの7社と言えますが、バブル経済の崩壊や失われた20年と呼ばれる経済が最も冷え込んだ時代には各社共に苦難の状態に陥っていたと言われ、その時期を経たからこその現在の投資分野強化に至ったとも考えられています。

総合商社は、日本的な企業のあり方を体現しリードし続けている

戦後の世情を背景に現代企業の頂点としての成長を遂げたのちに、ビジネス構造そのものを事業投資に軸足を置く方向に転換したことで大企業としての立ち位置をいっそう揺るぎないものにした総合商社は、まさに日本的な企業のあり方を体現しリードし続けていると言えます。

日本の企業に限らずグローバル展開をしている世界中の企業が世界情勢と密接にかかわり、それらの動きでさらなる収益を上げる一方である地域での政変や紛争など何らかの要因によって大きな損失をこうむるリスクと隣り合わせになっており、大企業といえども決して安泰とは言えない時代が続いていることは明らかです。

日本は他国の紛争は遠い地域での出来事といった捉え方の人が大半ですが、遠隔地での紛争による世界経済の動きから無縁でいられるわけではなく、雲の上の企業の思惑に無関心のままでいるという姿勢を改めたほうが良いと言われる時代になっています。

多くの人が日本は世界で行われている戦争と無縁と考えていますが、日本企業も兵器製造を行っていることから他国で起こった戦闘で収益を上げている国の一つでもあります。

日常の暮らしがあまりに忙しく自分と直接かかわりのないことを深く考える時間もないのが日本人と言われますが、そういう社会や業務形態になって来た要因は何かや最終的にどういった企業が最も収益を上げて得をしているのかを、一度冷静になって考えてみるのも今の時代を生き抜くうえで必要と考えられます。

最終更新日 2025年7月24日